続・狂牛病騒動に思うこと
長町病院小児科 渡辺 瑞香子
消えてしまった牛肉
スーパーの棚から牛肉が減ったままです。国産のものはない日もあり、オーストラリア産、アメリカ産と表示が見えます。先日学会に出かけたら、牛肉を使ったお弁当は扱っていませんでした。もう1ヶ月以上も経つのにさっぱり問題が整理されてきません。あいまいに問題を先送りしてきたツケです。例によって、大臣がそろって牛肉を食べるパフォーマンス。十分な対策がとられたとは思えない段階で安全宣言が出そうになりました。行政は飽きもせず同じ事を繰り返しています。昨日、今日食べているものが問題なのではありません。ここ10年くらいの食生活が問われているのです。イギリスで最初に問題になったのはいつだったでしょう。狂牛病が報告されたのが1986年。人間の新異型クロイツフェルト・ヤコブ病が報告され、恐らくは牛からうつった事がわかったのは1996年のことでした。肉骨粉が問題だったのだとすれば、当然日本の牛は危険だったのです。前回書いたように、新異型クロイツフェルト・ヤコブ病の潜伏期間は10年と長く、日本で発病する人が出るとすれば、そろそろ危ないのです。
食生活が変わってしまう
何を食べたらよいかは、新聞やインターネットなどで得られる情報から自分で判断するしかなさそうです。私は、「肉」そのものはやめてはいません。原料があいまいになっている加工食品やレトルト食品などは避けることにしています。残念ながら一度体に入った異常なプリオンを除く方法がまだありません。今の所、豚や鶏では報告がありませんが、人と牛よりは、人と豚のほうが遺伝子的に近い存在なので安全かどうか何とも言えません。どうしても危険を避けたければ肉を食べること自体をやめなければなりません。エキスやゼラチンを含むような食品をも避けるとすれば、食生活自体かなり今までとは違ったものになるはずです。レトルト食品や加工食品や調味料などずいぶんたくさんのものに使われているからです。もしも、それらの食品を除いたら、食べるものがなくなるという人はかなり危ない橋を渡っているかもしれませんよ。
生命・心を育てる「食」
1歳の子供が"じんましん"で受診したので、夕食に食べたものを聞いてみると、「おにぎり(コンビニの)、カップメン、イオン飲料」と言う返事が返ってくるではありませんか。怒るより何より、もう根本的なところで「食」というものが軽くなってしまったとしか思えませんでした。豊かな食生活とは高いもの、高級なものを食べることではありません。食べることは自分が生きていくために「いのち」を他から頂くということです。「何を食べるのも自由、空腹が満たせればいい」本当でしょうか?料理に手をかけることは「いのち」を大切にすることです。家族で囲む食卓は楽しくなければいけません。「食」は体を作り、心を育てるものだからです。(このことは後日改めて取り上げます)