狂牛病騒動に思うこと
長町病院小児科 渡辺 瑞香子
ついに狂牛病の牛が・・・
ついにというかやはりというか。日本でも狂牛病の牛が確認されました。アメリカやオーストラリアと違って、耕土面積が狭い日本では牛を牧草のみでは飼うことができません。結局穀物飼料などに頼ることになるのでしょうが、使用を禁止していたはずの肉骨粉も使用されていた訳です。それにしても役所の言うことのくるくる変わること。新しい事実が後からわかったような言い方ですが、農水省が「狂牛病の疑い」を発表した時点で、事はかなり深刻であったはずです。はじめから筋道立てて事実を明らかにし、対策を話したほうがパニックにならないのに。これでは「肉は安全です。牛乳は大丈夫です。」といわれても信じる気にはなりませんよね。誰の顔色を伺っているのか、薬害エイズなどの悲惨な事件に何も学んでこないこの国の行政に絶望感さえ覚えます。
農家にも影響
通勤の途中、「焼肉屋さん」のチラシをもらいました。最近開店したお店でもないので、やはり今回の事件が影響しているのかと気の毒になりました。給食に牛肉の使用を取り止める学校が増えています。牛乳さえ中止になった地域もあります。WHOの報告でも普通の肉や牛乳は安全なのですが、代わりの食材がある以上この状況は致し方ないとは思います。農家の方にはかなりの影響があるでしょうね。イギリスで問題になった時から適切な対応をしてくれば、この国の畜産・酪農に与える打撃ははるかに少なくてすんだのではないでしょうか。「肉骨粉の使用の禁止」といっても、行政指導という形では成り行きに任せたのとあまり変わらないと思いますが。
危険なものは食べない
「狂牛病」は牛の病気ですが、騒がれる理由は人間にも感染する可能性があるからです。1996年イギリスで新型のクロイツフェルト・ヤコブ病の症例が報告されました。両者の病原体が様々な分析により極めて似ていることが分かりました。極めてまれながら、狂牛病は人間に伝染すると結論が出ています。原因として病気の牛の内臓や脊髄などを食べたことが考えられています。潜伏期間は10年と長く、病原体はプリオンと呼ばれるたんぱく質です。これは熱などにとても強く、普通の加熱では変化しません。厄介ですが、危険の大きいものを食べなければよいわけですから、パニックになる必要はないのではないでしょうか?
人間への警告
「狂牛病」の始まりは、「スクレイビー」に感染した羊を牛の飼料として与えたためと言われます。現在詳しい実験が行われているそうです。「狂牛病」はその病気で死んだ牛の「肉骨粉」を飼料として与えることで別の牛に感染します。牛が本来食べるべきもので育っていればありえないことでした。運命論的な言い方で恐縮ですが、この病気は食物連鎖の環を崩してしまった人間への警告ではないのでしょうか。
注:クロイツフェルト・ヤコブ病、狂牛病、スクレイビーはいずれもプリオンによっておきる、脳が海綿状に変性する疾患。