娘への手紙
長町病院小児科 渡辺 瑞香子
赤ちゃんを産む準備
初潮を迎えた日、あなたはずい分落ち込んでいたね。部屋にこもったままでいるので心配して見に行きました。お母さんも自分の時のことを思い出していたよ。もう中1になっていたけれど、自分の身に起きたことは受け入れがたくて、いくら勉強していたってショックであることに変わりないものね。(まだ5年生だったし)赤飯を炊いて祝う気分にはあまりならないよね。生理が始まることは赤ちゃんを産む準備が出来たってことで、大人への第1歩を踏み出したわけなのだけれど…。”ICHIRO”Tシャツを着て喜ぶあなたにはまだ遠いことに思えていたのでしょう。
女の子らしさとは縁はないけど
あなたが生まれた時、小さかったけど3人の中で一番元気だったんだよね。引越しや仕事のストレスで無理がたたって、早く生まれそうになって入院したのでした。3週間、病院のベッドの上で動くこともできず、あれこれ考えていました。今まで自分が「まるで子供がいないかのように」生活してきたのだと反省。幸いにして、中耳炎には何回もかかったけれど元気いっぱいに育ってくれました。スカートは嫌いだし、お兄ちゃんの影響で三国志にはまっていて、「女の子らしさ」とは縁がないですねえ。そんなあなたが大好きですが。
子供を生み、育てるということ
それでもいつかは好きな男の子ができて、親や兄弟より大切な人になっていくのでしょう。最近仕事をしていて思うこと、子どもを産める性であることはもっと大事にしてもらいたいと。身近でシングルマザーが増えているのです。いろんな思いはあるのだけれど、お金がなければ子どもを育てるのは大変です。お母さんの生活が安定してなければ余裕がなくなってしまうから。病気になった時に病院にくるのが遅れて、重くなっていたこともあります。お母さんに余裕がないと子供の気持ちも不安定になっていることが多いみたい。子どもの病気って(子どもだけじゃないのかな)家庭次第と思い知らされるね。中には新しいお父さんができた子もいるけれど、いいことばかりじゃないのよね。
自分を大切にね
ティーンエージャーのうちに中絶したり、自分の体を大切にしないでいてクラミジアみたいな病気(性的感染症と言います、難しいかな)にかかってしまったりする人も残念だけど少ないとはいえないなあ。そういう生き方をしていると、いざ赤ちゃんが欲しくなった時に困ることになるの。生命の誕生に必要な器官(子宮・卵管・卵巣)を痛めつけてしまうと、子供ができなかったり、予定より早く生まれてしまったり(未熟児になります)、障害を持って生まれてきたり…。ゲームならリセットは何回でもできます。でも本物の赤ちゃんはそうはいかないよね。人生も。お母さんはどの子も祝福されて生まれてきて欲しいと思って仕事しています。女の子は自分を大切にすること。そして相手を大切にできる彼を選ぶこと。今は遠い話だろうけれど、好きな人ができたら思い出してね。