★子育て★連載コラム

第60回 ヴァーチャルな子育て
坂総合病院 渡辺 瑞香子
赤ちゃんの熱中症
先日愛知県で、自動車内に放置された2ヶ月の赤ちゃんが、熱中症のために亡くなりました。両親でパチンコをしている間のできごとです。車中放置で亡くなるお子さんの話は毎年のように報道されています。いまだに事故が無くなりません。今回の場合、5時間も放置されており、エアコンがつけられていた形跡もありません。夏でなくても、晴天の日の閉め切った車の中の気温はたやすく上昇します。「車の中で子どもが死ぬとは思わなかった。」と親は話しているようです。おっぱいも与えられず、オムツも取り替えられず、泣いても誰も来ないという残酷な状況にわが子を置いているという実感がなかったのですね。想像するに、母乳ではなかったのでしょう。せめて母乳であれば、おっぱいが張ってきて、子どものことを忘れはしなかったでしょうに。
他人事のように振舞う親
最近、小児科の患者さんを診ていて、困ってしまうことが多くなりました。乳児を連れて遠くまで出かけたり、子どもが体調を崩しているのに旅行の日程を中止にしなかったり、肺炎など入院も考慮される病気で受診しているのに登校の許可を求めたりされることが頻繁にあります。その無理なことの結果が重大であっても、まるでひとごとのように振舞っている親に会うと、こちらの方がどう対応してよいのかわからなくなります。子どもの行動パターンが想像できずに、タバコの誤飲や転落、熱傷などの事故が起きることは以前からありましたが、近頃では自分の落ち度だと思わない親が増えました。
たまごっち
さて、小学生・幼稚園児の女の子たちが「たまごっち」を首にかけてくるのをよく見かけるようになりました。かつて一世を風靡していたものの、いつしか廃れていたのですが。ゲームとしてはよくできているのでしょうね。用があると「たまごっち」が呼ぶのだそうで。きょうだいでひとつずつ持ち、学校に行っている間は、おかあさんが複数のたまごっちの世話をするという笑えない話もあります。ゲーム上のペットもうまく育てないと性格も悪くなるそうだし、早く死んでしまうらしいですね。けれども生き物との一番の違いは何度でもやり直しが効くということなのです。思い通りに育たなくても困りませんし、死んでも悲しくはならないでしょう?限りある命の重みまでは教えてくれませんよね。
親の「皮膚感覚」
子どもの息づかいや体の熱さに、病気であることを感じ取ったり、泣いて寝なくて、一晩中抱っこしていたり。親になるということは子どもと一緒にいろいろなことを体感していくことでもあります。あまりに便利になりすぎたのが問題なのか、最近、日本人の「皮膚感覚」というか生命体としての危機を察知する力が弱まっているような気がしてなりません。今のままでは、子どもを熱中症にする親には、実際にロックされた車内で、水分補給なしで一定時間過ごす体験をさせるという荒療治さえ必要になるかもしれません。
