★子育て★連載コラム

第54回 予防接種漂流

                                                坂総合病院 渡辺 瑞香子

 

 制度が変わったBCG接種

 今年4月からBCGの接種法と時期が大きく変わりました。結核に感染しているかどうかを確認するためのツベルクリン反応が無くなり、接種対象は今までの4歳までから一気に生後6ヶ月までに限定されました。BCGの予防効果として期待できるのは粟粒結核や結核性髄膜炎など重症化を防ぐことであり、確かに乳幼児期早期の接種が強く勧められます。結核に感染している方にBCGを接種することを避ける意味もあります。出生直後から可能ということになっていますが、小児科医の立場からすれば、その子が重い免疫不全でないことを確かめるには、せめて3ヶ月までは観察する必要があると考えているので、接種する現実的な期間が短くなってしまいました。病気や手術などで逃した時の対応は自治体に任されています。結果として、接種をできなかったお子さんが、少なからず出ているようです。小児科学会では、1歳までを救済対象にすることを提案していましたが、かないませんでした。結核の増加につながらないか心配しています。


 麻疹・風疹の接種制度も変わります

 また、来年4月から麻疹・風疹の接種方法も変わろうとしています。麻疹輸出大国と揶揄される日本の小児科医にとって、麻疹2回接種法は長年の夢でした。ようやくかなうと喜んでいたのですが、話はそう簡単ではありませんでした。現在は麻疹と風疹のワクチンは各1回ずつ1歳〜7歳半まで接種しています。来年4月以降は麻疹・風疹混合ワクチンを用い、T(1)期を1歳以上2歳未満の1年間、U(2)期を小学校入学前の1年間に行うという方式に変わります。残念ながら、この方式はいくつか問題があるのです。何かの理由で接種を延期していたお子さんが、今年4月の段階で2歳になっている時は、公費で接種する機会が就学前までありません。3月までに麻疹のみ接種して、風疹を済ませてないお子さんは、公費で風疹を受ける機会を失います。旧方式で麻疹・風疹を接種したお子さんは、新方式のU(2)期を受けられません。2回法の効果が目に見えるまで数年かかりそうです。接種の機会を失わないように、個別のスケジュール調整に苦慮しています。


 子どもたちの方を向いていないわが国の政策

 予防接種に関しては苦い記憶が残ります。平成元年に始まった、新三種混合(麻疹・風疹・おたふくかぜ)が、無菌性髄膜炎多発のために、平成4年に中止になった時のことです。医療機関への通達より先に、TVで報道がされていました。現場は大混乱でした。今年、日本脳炎の接種が突然見合わせられた時、朝のTVニュースで初めて知りました。集団接種している地域では、保健所からの正式な連絡が来る前に問い合わせの電話が殺到し、担当職員は対応に追われたと聞きました。スマートではありませんね。少子化が問題になり、生まれてきた子どもたちの命は大切に守らなければならないと思うのですが、私にはこの国の政策が子どもたちの方を向いているようには見えないのです。