★子育て★連載コラム

第50回 いじめの体感度

                                                坂総合病院 渡辺 瑞香子

 

 クラスのいじめ

 子どもたちが小学生の頃のことです。高学年になって、クラスにいじめが起きてしまいました。ばい菌ごっことでも言うのでしょうか。その子から逃げたり、触れたものを遠ざけたりする状態が続いたそうです。わが子の口から聞いてはいたのですが、ある日の父兄会で、明らかになりました。大人の目からは、なぜその子がいじめられるのか、全く理解できませんでした。きっかけになったと想像されることもささいなことで、本人には責任の取りようのないことでした。日本の国はいじめを生みやすい土壌があるように思います。和を尊ぶということは異質なものを排除する方向に動くということでもあるからです。


 中心はリーダー格の子

 最近のいじめの難しいところですが、中心になったのは勉強も運動もできるリーダー格の子で驚きました。わが子が怒っていたのは、事情を知らないはずの転校生までが、いじめに加わっていたことでした。とりあえず、そちらに加わるのが安全だからかと。担任の先生はその子の席の前後左右をいじめに加担しない子どもたちで囲んだり、班のメンバーを慎重に選んだりする事で深刻にならないよう工夫されていたようです。幸い陰湿な方向に加速することもなく、本人の強さもあって、卒業までには下火になりました。いじめの中心だった子も始めた理由がよくわからないようでした。一見輝きに満ちたその子も、内には処理しきれない怒りや悲しみを抱えていたと理解すればいいのでしょうか。


 山口の爆発物事件といじめ

 さて、山口県の高校で、同学年の子に爆発物を向けるという事件がおきました。インターネットなどで製造方法を調べたとの報道です。火薬だけでなく、釘などを混入して威力を増していたとのこと。彼の怒りや破壊衝動は相当なものなのでしょうが、ここまで小競り合いやけんからしきこともなく、いきなりの結果にとまどうばかりです。無口な少年らしいのですが、知的には一定のレベルと思われ、先生方も混乱されていることでしょう。無口なことをからかわれていたのは確かなのでしょう。しかし、あれだけの怒りを了解させるほどのいじめの事実が出てくるかは疑問です。


 些細な一言

 人によって感じ方には差があります。彼にとってはからかいの言葉は剣のごとく突き刺さったのかも知れません。自分の命やこころがおびやかされると感じたゆえの行為としか思えないのです。それを引き起こしたのは、私たちも口にしてしまいそうな言葉なのかも知れません。感覚の過敏な人は確かにいます。でも、そのことに小さい頃から気づいて、注意深く接していれば、緩和することはできるように思います。その特性に気づかれないまま、彼は今まで過ごしてきたような気がしてなりません。