★子育て★連載コラム

第47回 ある父と息子
坂総合病院 渡辺 瑞香子
春の訪れ
今年はいつまでも雪が降って、春の訪れが遅いようですね。3月は旅立ちの準備の時。我が家でも長男と長女がそれぞれ大学受験と高校受験です。娘の方はいずれどこかに決まるでしょうが、息子はどうやら浪人確定のようです。夏休み前、塾の先生から「志望が医学部ということですが…。」と言われて絶句。どう考えても文系頭の上、実力的にあまりにも遠い目標だったからです。両親とも医者であるため他の職業のイメージが浮かばなかったということのようでした。あきれられると思ったか、私にも面談の後でようやく話した訳ですが、父親にはもっと話しづらかったらしく、とうとう自分からは話しませんでした。
自分の道を見つけてくれたら
夫の反応はと言えば、「それなら今年は練習だな。」とポツリ。本人が力を出しきっていないと思っているようでした。学園祭の実行委員を2年続けて引き受け、たくさんの友人に恵まれた高校生活を送り、勉強はこれからするのだろうと。長男が医師に向いているかどうか悩みつつも、医学部を受けることは内心うれしそうでした(私も)。二人とも子どもたちに医師を目指すことを求めたことはありません。でも誰も見向きもしてくれないのもさびしい気がします。自分たちの生き方が認められていないようで。ただしこの仕事は生半可な気持ちでは勤まりません。周りに影響されることなく、1年間かけて自分の道を見つけてくれればいいと思っています。
不器用
それにしても、父親と息子の関わり方は不器用ですね。夫も長男も私に話をすれば互いの話は終わっていると思っているようです。直接話をしなくても、意外と断絶していないのも不思議です。娘と私の遠慮なく戦う関係とは随分違います。次男の方は今のところ自然体ですが。母親には気をゆるめているようですが、父親と二人だけになると何となく居心地が悪そうです。威圧感のある人ではないのですけれど。古今東西、父親と息子というのはそういうものなのでしょうか。文学や演劇のテーマとしては普遍的ではありますね。
父と息子
現在放送中のドラマ「優しい時間」は、突き放された瞬間、父を愛していることに気づいた息子と、信じたいと思いつつ息子を拒否してしまう父親の物語と思って見ています。北の大地が刻む時間と人々とのふれ合いを通じて、二人を隔てる目に見えない壁が、少しずつ取り払われていくのでしょう。また、仲間由紀恵さんの演技が光る「ごくせん」は学園ものですが、要所に父親と息子というテーマが出てきます。父親は息子にとって目標となったり、反面教師であったりします。乗り越えることが不可能なほど大きすぎても、突然存在がなくなってもつらい思いをするようですね。女の私は、そういうものを通じていろいろ想像しております。
