★子育て★連載コラム   第35回

愛されたくて

                                 坂総合病院  渡辺瑞香子


 子どものこころ

 最近、続けてこんなことがありました。患者さんの入院が必要な段になって、「お母さんがいないので付き添いが難しい。」と。
そういえば、寂しそうな目をしているのです。
手をギューっと握って、凍りついたように、身動きもせずに。
抱きとめてもらえない不安がサワサワと肌を貫いて伝わってくるのです。

入院して間もなく、いつの間にか、お母さんと思われる女の人が側に付いていました。
かすかに動かす首の向きで「ウン」と「ウウン」を区別できたような子が、急に生き生きと自分を表現し始めます。
私は黙って一緒にニコニコしていました。
退院が決まればまたバイバイです。
子どもの願いと大人の思いは別なところにある、残念ですが。
あの子らは駄々をこねたりしません。どうにもならないと知っているから。



 思 い

 あれは、かつての私の姿。
4歳の時に両親が離婚して、私は、母とも妹とも別に暮らすことになったのです。
いつものように、伯母の家に遊びに行くつもりで母と出かけ、もう家に戻れないことを知りました。
何と言われたかは覚えていないのですが、母の必死の表情に、私には選ぶ余地はないのだと分かっていました。

離婚の理由を正式に聞いたことはありません。
自分なりに理解しているつもりです。責任の大半は父の方にあるだろうと。二人の子どもを育てきれるだけの経済力がなかったのだと。
それでも時々弱気になってしまいます。決断が必要な時飛べなくなるのです。
母に選ばれなかったような気がしてしまうのでしょうね。

 愛して守る

 リストカットを繰り返す子たち。拒食症になる子たち。道を踏み外していく子たち。その誰もが自分に似ているような気がしてせつなくなります。親に愛されていると自信が持てないのでしょうね。誰か一人でも信頼のできる大人に出会えれば、抜け出せるかも知れない…。
私が泣けなくなったのはいつからだったでしょう。

今まで自分を支えてきたのは、「医師」という仕事に出会えたことと3人の我が子たちだと思います。
結婚や家庭を持つことは、ずっと他人事のような気がしていました。モデルになるものがないのですから。

長男は「やってみようよ」と背中を押してくれ、長女に「子どもがいる女医であることを誇って」と諭され、
次男に「我が子は無条件にかわいいでしょ」と囁かれたように思います。
愛されることを求めていた時には満たされず、愛して守る存在ができて人は強くなるものらしいです。




  誇りを持って

 近頃の世情を反映してか、受診する子の中に、家庭に問題を抱えるケースが増えてきました。
両親ともいなくなってしまった子さえいます。事情はいろいろあるだろうけれど、子どもが生まれてくるとなったら、覚悟はしてほしいものです。

それでも、別離の時は来るかも知れません。
せめて親として誇りを持って、生き生きとした姿を見せて下さい。あなたが暗く惨めであれば、子どもはもっと傷つくのだから。




   

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