★子育て★連載コラム   第30回

発達障害

                                     坂総合病院  渡辺瑞香子

 

 「報道」の体質

 先日、長崎の事件の加害者の精神鑑定の結果が出ました。「広汎性発達障害」(そのうちのアスペルガー症候群)とされています。
極めて特異な事件であるため、事件直後から、彼の行動上の気がかりな点がいくつか報道されており、その可能性は考えていました。

しかし、事件当初、十分な情報もないまま「普通の子」と報道された時と同じように釈然としないものが残りました。
限られた記事の中では、障害の全体像を表現できず、誤解を招くからです。特別の子の特別な事件として、深い理解が得られないまま、記憶が風化していくのではないでしょうか。

また、同じ診断を受けている子どもの家族は、傷ついて、息を潜めているに違いないのです。


 親としてその魅力とは?

 鑑定結果が出るまでの間、様々な特集記事が雑誌や新聞をにぎわしていました。両親の不和の問題や母親の孤立した価値観についての記事を見かけました。
生来の障害と生育環境のどちらがどれだけの影響を与えたのか、それは分かりません。
しかし、子どもがいながら孤立へ向かうということは尋常では無いと思います。

人付き合いは大の苦手の私ですが、子どもの存在が新しい「人とのつながり」を自然に生んでくれました(子ども会やPTA活動などとして)。
そこからあえて逃避する時、家庭の問題のこともありますが、「難しい」子どもを抱えている可能性もあり得るのです。

 親と子の関係は

 子育てをする時、親の励みは何でしょう。
おそらくは子どもの笑顔であり、働きかけに返ってくる様々な反応でしょう。
歩くようになって、「ママ」や「パパ」と呼びかけてくる1つ1つが喜びなわけです。

それなのに、泣いてばかりいて、寝ないし、食べないわが子であったならば、誰だって子育てに行き詰ることでしょう。
そのような「難しい」子どもの中に後で発達障害であることがはっきりする子がいるのです。
完全な親などいないわけですから、わが子とのかかわりの中で時々まずい対応をすることはあります。
それでもたいていの子どもはしなやかに受け止めて、育っていきます。
けれども、障害を持つ子は、そのままダメージとなることが多いのです。


  人は皆平等に

 今回のケースは「最初のボタンを掛け違えた」まま、過ごしてしまったのだと思います。
親として、何とか生きていく力をつけさせようと、成績にこだわったのでしょう。
最も大切な心のつながりを置き去りにして。

地域の健診などで、気がかりな子をチェックするのは、レッテルを貼るためではありません。
障害のある子にはその特性を知って接する必要があります。
落ち込む親のサポートも不可欠です。現実の世界は何も制限がないようでいて、見えないルールがあります。

広汎性発達障害のように生来の社会性の障害が中核である場合はつつがなく暮らしていくための「アイテム」が必要です。
早期から関わった方が結果は良いようです。
本来持っている力を傷つけずに引き出すことが大切なのです。



   

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