★子育て★連載コラム   第29回

親である事の条件

                                     坂総合病院  渡辺瑞香子

 

 悲しいニュース

 今年もまた悲しいニュースが飛び込んできました。
車内に放置された幼児が熱中症で亡くなったのです。今年は記録的な冷夏でしたが、最近2〜3日夏らしい日差しが戻ってきていました。

車の中はどんなにか暑かったことでしょう。
エアコンをつけず窓を閉めた状態にすれば、30分ほどで50〜60度にまで上昇するのです。
母親はパチンコ屋に行っていました。毎年同じことが繰り返され、知識が積み上げられていかないことに、ただため息です。

1年あたり、車内放置により、熱中症で亡くなるケースは平均4人だそうです。
そのすべては4歳以下の乳幼児で、放置の理由はパチンコや買い物です。


 その魅力とは?

 私はパチンコをしませんから、それがどれほど魅力的なものなのか分かりません。
この不景気も、その業界には無関係なようです。

休日などは、駐車場は満員ですし、タクシーの運転手さんから、主婦をパチンコ屋までよく乗せるという話を聞かされたこともあります。
託児のサービスをしているところもあるそうです。

育児をしているからといって、好きなことをあきらめる必要はない―とは言え、時と場所と自分の立場はわきまえるべきではないでしょうか。
我が子の笑顔や笑い声に代えられるものが本当にあるのでしょうか?

 思いきった措置を

 たとえ真夏でなくても、晴れた日の車の中が暑くなることは経験的に知っていますよね?
車内での熱中症は冬でも起きることが報告されています。
車の中は熱を吸収しやすく、放散しにくい構造になっているからです。
問題は車の中に乳幼児を放置する行為そのものなのです。

耐えられないほどの暑さの中に、水も飲むことができずに放っておかれて、チャイルドシートに固定されて動くこともできず、助けを求めても側に誰もいない―子どもがどんな気持ちになるのか想像してみてください。

アメリカでは放置しただけで逮捕されます。そこは安全な空間ではないのだから、当然育児放棄と見なされる訳です。
日本でも、警告の意味を込めて、免許証の減点などの措置に踏み切ったほうがよいと思います。


  宝があれば

「銀も 黄金も玉も なにせむに 優れる宝 子にしかめやも」(万葉集) 
国語の教科書で一度は読んだことがあるでしょう。
大伴家持が詠んだ歌です。
子どもに対する深い愛情を表現したものとして有名です。

親であることに、特別な勉強も知識も必要だとは思いません。
子どもを人生のすべてにする必要はないけれど、子どものために生きていく覚悟を持てればそれで合格です。
小児科医を20年近くやってきて、心の底からそう思うようになりました。



   

                      前回のコラムへ   子育てまざらいんTOPページへ