★子育て★連載コラム

私が小児科医になったワケ

                                                坂総合病院 渡辺 瑞香子

 

 小児科医の醍醐味

 前回、小児科医を希望する医学生が少ないことを書きました。忙しくて、稼ぎが悪いイメージがあって敬遠されるようです。また、最新の医療技術とも縁遠いからかも知れません。残念な事です。でも私自身は小児科医になったことを後悔したことはありません。

健診の日、赤ちゃんが並んで待っている姿を見ると、知らないうちに頬が緩んでいます。診察室のいたずらっ子も大好きです。小児科の醍醐味は患者さんが成長していく存在であることだと思います。わが子の成長と共に、親の気持ちに寄り添えるなんて素晴らしいことです。
わが子との日常から患者さんの気持ちをくみ取り、患者さんを通してわが子の気持ちを理解し、親としても成長してきたと思います。患者さんが親となり、また自分の子を連れてきて、昔話に花を咲かせるのもまた楽しいものです。

 仕事から学ぶ事

 ところで、小児科相手が子どもであるため、検査があまりできません。ていねいにお話を聞き、正確に所見をとることが大切で、小児科こそ医療の原点と勝手に自負しています。聴診器を持つのは最後の仕上げであり、患者さんが診察室に入った時から仕事は始まっているのです。

言葉ではあまり症状を語らない患者さんの様子、息づかい、親の表情・言葉の調子にいたるまで、すべてが貴重な情報です。文字通り五感をすべて使っているような気がします。
子どもは症状が悪化するのが速いのですが、こちらが手を尽くせば、それに答えて回復してくれます。その生命力に、いつも驚嘆しています。


 子育て世情

 言うまでもないことですが、病気が重くなるには必ず理由があります。子どもは特に生活上の問題をストレートに反映してきます。時間外に来たり、症状がひどくなってから来たりする患者さんがいたら、怒りの言葉をグッと飲み込んで、背景を理解する努力をする必要があるのです。

5年ほど前から、子どもたちの生活環境が悪化していて、心配をしています。不況の影響もあるのでしょう。母親の労働時間も長くなっています。親も含めて食事や生活リズムの乱れが心配されます。
ゆとりのない生活はまた Maltreatment ―不適切な養育(虐待の代わりに使用されつつある言葉)を生み出す原因にもなります。そこまででなくても、親は以前より育児を負担に感じていて、小児科医の仕事は尽きる事はないようです。


 生きがいと天職

 私は子供の頃は病気がちで、ずい分と小児科のお世話になりました。(生後1ヶ月の時と6歳の時)肺炎で2回入院しています。そのためか、医師になった時、ほぼ小児科医になる事は決めていました。
私にとっては、医師=小児科医だったのです。

医療機関への感謝の気持ちと辛かった2回目の入院の体験を思い出して、自分なりの理想を求めて仕事をしています。引退するその日まで、できるだけたくさんの親子と出会い、記憶に留めてらえれば嬉しいですが。