インフルエンザをめぐって
−解熱剤(熱さまし)の功罪
長町病院小児科 渡辺 瑞香子
インフルエンザの季節
この頃めっきり暖かくなってきましたね。雪が解けたと思ったら、杉の花粉が飛び始めたようです。花粉症の患者さんが目立ってきました。毎年冬にはインフルエンザが流行して新聞をにぎわすのですが、今年は小規模な流行で終わりそうです。幸いにして脳炎の報告も今のところなく、お年寄りの施設での流行もない様です。太白区では、公立高校の入試直前に流行が始まったので、受験生には気の毒だったと思います。
ウイルスの「顔」
インフルエンザは、麻疹(はしか)や水痘(みずぼうそう)と違い、一度罹ったら大丈夫と言うわけにはいきません。ウイルスの「顔」が少しずつ変化するため何度も罹り毎年流行するのです。お年寄りの肺炎・小児の脳炎が話題になり、ワクチンの接種も多くなりましたが、今年の流行が静かなのはそのためばかりとは言えないようです。ウイルスの型が大きく変化する前兆かもしれません。注意して見ていきたいと思います。
解熱剤への警告
さて、最近解熱剤の一部が脳炎を重症化させる可能性のあることが明らかになってきました。ジクロフェナクナトリウム(商品名ボルタレンが有名)とメフェナム酸(商品名ポンタールが有名)です。アメリカではアスピリンとライ症候群の関係が疑われて以来、アスピリンの使用が抑えられ、脳炎・脳症の報告が非常に少なくなりました。一方日本では、ここ十数年インフルエンザの時期に一致して脳炎・脳症の発生が目立って多くなっています。国際的にもこのような現象が見られるのは、日本とアジアの一部に限られています。その原因として、欧米では小児に許可されていないそれら二つの解熱剤が疑われていました。ようやく今年になって、警告が発せられたのです。
発熱への対処
発熱は、ウィルスに対する一種の免疫反応です。強い解熱剤で無理に熱を下げることは、ウィルスと戦う防衛軍を同士討ちする事になてしまいます。インフルエンザの様に強力なウィルスを相手にする時は、体温は38度台に保つ方がよく、解熱剤を使うのであれば作用の穏やかなアセトアミノフェンが適切でしょう。抗ウィルス剤も何種類かあります。大事なのは普段から夜更かしをしたり、バランスの悪い食生活をして、体をいじめないことです。もし罹ったら、適温適湿に保った部屋で安静にして、水分を十分にとることも忘れないでください。食事は炭水化物(お粥、うどんなど)や野菜などを中心とし、熱が続いて具合が悪い時に無理に脂肪やタンパク質の多いものを食べさせない方がよいのです。回復期まで待ってからにしましょう。