9月1日から私の勤務先は全館禁煙になりました。健康面を考えれば当然のことなのでしょうが、理解されて定着するまでに少し時間がかかるかもしれません。愛煙家の医師たちも、涙ぐましい禁煙の努力をしているはずです。本来なら、禁煙の指導をする立場の仕事ですが、ヘビースモーカーの呼吸器科医、循環器科医がなぜかいます。喫煙場所を失って、中庭で隠れて吸ったために、蚊の被害にあった人もいるらしいです…うわさですが。
習慣的な喫煙はまぎれもなくニコチン依存症です。離脱症状をやわらげるためにニコチンパッチの処方もできるのですが、さてどうなりますことやら。スモーカーの女性医師はどうやらいないようで、ホッとしています。
胎児は、母親が妊娠中にたばこの煙を吸うことによって、胎盤を通じて有害化学物質に曝露します。
問題は、ニコチン、タール、一酸化炭素だけではありません。たばこの煙の中に含まれるダイオキシン濃度を測定した研究によると、全ダイオキシン濃度は、1.81
ngTEQ/m3であったと報告されています。
個人のダイオキシン類の平均的な1日摂取量約0.3-3.5pg-TEQ/kg/日 の相当部分を占め、環境中への放出量としても無視できません。うち、最も毒性が強い2,3,7,8-TCDDも検出されています。2,3,7,8-TCDDは内分泌の撹乱物質(環境ホルモン)として働いていると考えられます。動物実験によると、ほんのわずかな量であっても感受性の高い時期であれば、奇形などの可能性があるそうです。
仔の生殖機能、甲状腺機能、免疫機能への影響がかなりの低レベルで認められています。ヒトにおける影響については、台湾油症の研究で、子どもの成長の遅延、行動上の問題、知力の不足が認められており、生殖機能への影響も報告されています。 *TEQ(Toxic Equivalency Quantity)
当院産婦人科の舩山医師は妊婦さんに「生まれてくる子が(見た目に)何もないからいいということではなく、その子がまた健康な子孫を育めることを考えてたばこはやめるように」指導しているそうです。映画「ステラ」でシングルマザーとして生きる決意をした主人公が言います。
「赤ん坊ができたからって、何で好きなものを我慢しなきゃいけないの。あたしの人生なのに。」
ステラは酒場のバーテンダーです。機会がありましたら、その後生まれた娘にそそぐ、彼女の深い愛情をどうぞご覧になってみて下さい。